レポジトリーで見られた披裂軟骨の病変

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こんにちは。

今回は、雪が降り始めました日高からお送りいたします。

 

 

レポジトリーで、まれに披裂軟骨の病変がみられることがあります。

 

 

右披裂軟骨に潰瘍がみられます(矢印)。

鼻腔に膿性鼻汁がみられましたので、抗生物質の経口投与を行いました。

 

 

約2ヶ月後の検査では、潰瘍は小さくなっていました(矢印)。

 

 

 

 

こちらは、左右披裂軟骨に潰瘍がみられます(矢印)。

この症例では、抗生物質と抗炎症剤の経口投与と抗生物質の吸入を行いました。

 

 

約2週間後の検査では、潰瘍がみられなくなっていました(矢印)。

 

 

さらに1週間後の検査でも潰瘍はみられませんでした。

 

 

 

2003年のEquine Vet Jで発表されたKellyらの論文では

このような披裂軟骨の粘膜病変は 0.63%の1歳馬でみられたと報告しています。

 

潰瘍ができていた19頭のうち、フォローアップできなかった1頭を除く

 

18頭は消炎剤と抗生剤で治療を行い

 

15頭は合併症もなく、治癒

 

2頭は潰瘍から肉芽腫に進行

 

1頭は潰瘍から肉芽腫、披裂軟骨炎になったそうです。

 

 

 

市場レポジトリー撮影時に披裂軟骨の潰瘍がみられた場合は

積極的に治療をしていきたいです。

 

 

 

そんな我が診療所に ついにやってきました。

ポータブルの吸入器です。

 

動作確認をしましたが、動作音もすごく静かでした。

 

 

 

 

 

 

UK

育成馬の歯について

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こんにちは。

 

今の時期、競走馬の育成牧場では

育成馬の騎乗馴致や調教が始まっています。

 

今回は馴致が始まる時期に行う機会が多い、

育成馬の歯の処置についての話をします。

 

育成馬に対する歯の処置は

主に斜歯の整歯と、狼歯の抜歯です。

 

 

まずは斜歯の整歯について。

 

(馬の医学書 第一版 p.89)

 

馬は上顎のほうが下顎よりも幅が大きいので、

咀嚼を繰り返すことによって、

上の歯の外側と下の歯の内側(写真の赤線で囲んだ部分)

が尖ってしまいます。

 

この尖った歯を斜歯といいます。

斜歯が口腔粘膜や舌のを傷つけてしまい、

その結果食いが悪くなったりすることがあります。

 

斜歯の整歯は健康上、重要な処置です。

 

 

整歯は写真のヤスリを使い、

歯の尖った部分を削り取ります。

 

 

 

次に狼歯の抜歯についてです。

 

(馬の解剖アトラス 第3版 p.29)

 

狼歯は第1前臼歯(P1)の痕跡であり、萌出しない馬もいます。

狼歯があると、ハミ受けに影響を与えると言われており、

狼歯の抜歯は、ウマを制御する上で重要な処置です。

 

 

狼歯の抜歯に使用する筒状の道具です。

尖端に刃がついていて、

歯肉を歯から剥がすことで抜歯を行います。

 

 

狼歯の大きさは個体により様々なので、

歯の大きさに合わせて尖端部分の大きさを変えています。

 

抜歯の処置は鎮静下で行いますが、

馬にとっては不快なことです。

迅速に、適切な処置ができるように頑張ります。

 

 

 

北海道は紅葉も終わりに近づいています。。

 

UR

 

 

今年度の2歳馬、1歳馬セールが終了しました

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北海道は朝夕だけでなく、日中も寒くなって参りました。

 

去る10月18日、19日に北海道市場でオータムセールが開催され、

今年度の2歳馬、1歳馬のセールが終了しました。

 

 

カワタ エクワイン プラクティス日高では、

 

トレーニングセール(2歳馬) 36頭

 

セレクトセール(1歳馬) 10頭

 

セレクションセール(1歳馬) 20頭

 

サマーセール(1歳馬) 212頭

 

セプテンバーセール(1歳馬) 56頭

 

オータムセール(1歳馬) 75頭

(うち他セールからの追加上場で内視鏡のみ39頭)

 

延べ409頭のレポジトリー撮影をさせていただきました。

 

 

たくさんのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。

 

3月末から10月初旬まで撮影がありましたが、

今となっては、あっという間でした。

 

今年は夏の終りにハエが多かったように思います。

 

 

来期もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

 

 

UK

 

育成馬の乳酸値測定

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先日、育成馬の乳酸値測定を行いました。

 

 

育成馬の体力測定の方法として、

 

1.GPS機能付き心拍計を使用して、調教中の心拍数とスピードを測定する方法

2.ポータブル乳酸測定器を使用して、調教後の血中乳酸値を測定する方法

 

があります。

 

 

今回は2.の方法です。

 

調教後に、頸静脈から採血を行い

ポータブル乳酸測定器にセットしたセンサーに血液を吸引させると

15秒で測定結果が表示されます。

 

 

測定された乳酸値を用いて、調教時の馬の運動負荷を評価することができます。

 

また、乳酸値とラップタイムを用いて標準曲線をひくことにより

体力の変化を評価することができます。

 

 

調教メニューを変えた時や運動負荷を上げる時、

1〜2週間に1回、とくに強い調教をした時に測定を行います。

 

 

 

今回、使用した機器はこちら。

上から 真空採血管(ヘパリン)、ポータブル乳酸測定器とセンサー、採血用具 です。

採血した注射器から直接、乳酸値測定を行うこともできます。

 

 

なるべく運動後5分以内に採血を行わなければいけない

ラップタイムをできるだけ正確にとる

といった注意点もありますが、

育成馬の体力測定方法として取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

今は北海道も暖かくなってきています。

 

 

U

腱について2〜腱炎〜

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こんにちは。

北海道は寒いですが、プラス気温の暖かい日もあり、

道が凍って大変なときもあります。

 

今回は腱炎について。

 

腱炎とは腱または筋腱接合部で発生する炎症のことを示します。

 

臨床的に感知できる腱炎の病理学的状態は、

他の組織と同様に急性炎症期、亜急性修復期、慢性再構築期の3期に分けられます。

 

ただし、最終的に瘢痕組織(傷あと)を形成して、正常な機能は回復しません。

つまり、元には戻らないのです。

 

腱炎を発症した腱の肉眼像(A~C、Dの左側)。

赤色の変色部・出血部(矢印)と白色の瘢痕組織(矢頭)がみられます。

エコーのBモードでは、出血部は黒く、瘢痕組織部は真っ白に映ります。

Bでは瘢痕組織によって、腱の形が変わっています。

Dでは、腱炎発症腱が、正常な腱より太くなっているのがわかります。

 

 

急性炎症期は、臨床的な損傷の兆候とともに始まり、通常1~2週間です。

この時期は、腱内の出血、血液供給の増加、浮腫を伴う実質的な炎症と

最初に好中球、続いてマクロファージや単球といった白血球の浸潤があります。

 

 

亜急性修復期は、急性期と重なって損傷の数日以内に始まり、約3週間後にピークを迎えます。

この時期は、強度の血管新生反応と損傷組織内の腱細胞、内周膜および腱傍組織の細胞、

血管由来の単球などから由来する線維芽細胞が蓄積します。

これらの細胞は、無秩序に配列したⅢ型コラーゲン主体の瘢痕組織を合成します。

形成された瘢痕組織は、最初のうちは腱組織より弱く、

そのため、治癒した腱は、損傷部位での再損傷が起こりやすくなります。

この様な再損傷は、最初の2期を繰り返し、傷害された腱の量と損傷の重傷度が増加します。

 

 

慢性再構築期は損傷後数カ月に始まり、瘢痕組織は数カ月にわたってゆっくりと再構築されます。

この再構築過程で、Ⅲ型コラーゲンから、正常腱の主要構成物質であるⅠ型コラーゲンへ転換します。

しかし、この転換にもかかわらず、瘢痕組織は正常腱組織になることは決してありません。

 

電子顕微鏡で見た腱炎発症腱のコラーゲン細線維。

線維走行は不規則で(上の図)、

輪郭が不整なコラーゲン細線維がみられます(下の図の矢印)。

 

 

 

腱炎の発症機序はいまだ詳細にされていませんが、

腱炎を発症する前に、肉眼的に紫色やピンク色の変色部として観察され

細胞外マトリックスの構成分子や構造が変化した「退行性変化」が先行して起こり、

この臨床的に無症状の「退行性変化」から臨床的な腱炎が生じると考えられています。

 

 

 

 

私の骨折部も慢性再構築期に入っております。

骨折線はまだ見えますが、骨瘤のようにボッコリ出っ張っていた部分が吸収され、

だいぶ滑らかになってきましたよ!(矢印)

 

U

 

寝違えた?

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新年あけましておめでとうございます。
 
今年もよろしくお願いいたします。
 
 
 
 
年末年始ももちろん、競走馬の牧場は稼働しています。
 
1月1日くらいは騎乗はせずに世話だけ、というところもありますが、関係なくバリバリ騎乗している牧場もあります。
 
地方競馬場では正月競馬も連日開催されており、むしろ忙しい時期かもしれません。
 
 
この寒い時期でも、朝の暗いうちから働いている牧場スタッフには、頭の下がる思いです。
 
 
 

 
 
 
「なんでか分からないけど跛行している」という相談を、たまに受けます。
 
今回診たのもそんな馬でした。確かに馬房から出してもらうと、常歩でも跛行しているのが分かります。
 
 
しかしその担当者の言う通り、見たところ傷や腫れている箇所も見当たりません。
 
ざっと触ってみても熱感などもなし。でもはっきりと、右前肢が跛行しています。
 
 
 
ならば関節をチェックしてみます。
 
 
上から順に、肩関節、次いで肘関節。
 
 
と、肘関節を曲げた時に馬が嫌がり、前肢を下ろしました。
 
 
それでは、と左前肢で同様に肘関節を曲げると、それほど嫌がりません。なので痛みが、右の肘関節周辺にあることが分かります。
 
そこで前肢を上げて、前肢の内側の付け根、脇の辺りを触診してみます。
 
 
傷などはありませんが、浅胸筋〜横行胸筋のあたりでしょうか、押すと鋭く馬が反応し、飛び上がる箇所がありました。
 
他に痛みのある箇所も無いことから、そこが跛行の原因だろうと判断し、消炎剤を投与しました。
 
 
 
この馬の跛行は、前日の朝、乗る前からあったとのこと。その前の日は普通だったことから、夜の間に痛めた可能性があります。
 
 
 
 
こういう場合、疑われるのが「寝違え」です。
 
人間もよく、「寝違えて首を痛めた」などということがありますが、馬の場合は少し勝手が違います。
 
 
馬で寝違えというのは、馬房で寝返りを打った際に、身体と壁の間で脚がつっかえたり
 
馬房の隅に身体が挟まって、身動きが取れなくなることを言います。
 
 

 
馬が横になったときに、画像の赤丸の部分に脚や身体がはまり込んでいるような状態です。
 
 
 
最初に聞いたときには、なんて間抜けな動物なんだと思ったものですが、どうにか身体を起こそうとした馬が暴れて大きな怪我をしたり
 
長時間不自然な体勢で固定されることにより、血流が阻害され、命の危険に晒されることもあるため、意外と馬鹿にはできない状態です。
 
 
 
牧場で寝違えが発生した場合、急いで馬をおこさなくてはなりません。
 
そのためすぐに人手を集めます。そしてみんなで馬の身体を押したり、ロープを脚にかけて引っ張って、馬を馬房の中央に戻します。
 
その際にも暴れる馬に蹴られたりすることのないよう、注意が必要です。
 
 
 
今回診た馬も、担当者も「そういえば朝来たときに、馬着がずれていた」と言っており、寝違えや、夜の間にどこかに引っ掛けた・暴れて変に脚を開いた、
 
などのアクシデントがあった可能性があります。
 
 
二日目に診たときには、跛行はまだ少し見られましたが、前日よりは改善していました。そのため再度消炎剤を投与。
 
その次の日に馬が移動予定のため、これ以上の継続治療はできませんでしたが、移動先に申し送りをしてもらいました。
 
 
 
 
以前、馬房で怪我をした別の馬を診たとき、「朝来たら、吊るしてあった水桶が、天井近くにまで持ち上がっていた」と言われたこともあります。
 
夜の間に何があったのか?はっきりとは分かりませんでしたが、怪我をしていたことは事実。
 
 
安全と思われる馬房であっても、怪我の可能性は無いわけではないのです。
 
 
 
 
 
 
 

 
新年の快哉を叫ぶメッシ。
 
 
 
 
 
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