喉頭蓋エントラップメント(EE)について

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前回のブログで書かれていた喉頭片麻痺(Laryngeal Hemiplegia, LH)

の他にも異常呼吸音を呈す疾患があります。

 

軟口蓋背方変位(Dorsal Displacement of the Soft Plate, DDSP)や

喉頭蓋エントラップメント(Epiglottic Entrapment, EE)

第4鰓弓(さいきゅう)奇形(咽頭口蓋弓吻側変位)などです。

 

また、運動時内視鏡検査で認められる、

披裂喉頭蓋ヒダ軸側変位(ADAF)や声帯虚脱(VCC)などもあります。

 

今回はEEについて書きます。

実は、十数年前に初めてEEをみた時、DDSPとの違いがわかりませんでした。

 

 

DDSPは軟口蓋が喉頭蓋の上にきてしまう(背方変位)状態です。

 

喉頭蓋が軟口蓋の下に入り込んでいて、喉頭蓋が見えなくなります。

 

喉頭蓋が短く、薄い馬に起こりやすいですが、

喉頭蓋の形状が普通な馬でも頚を伸ばした時になってしまうことがありますので

内視鏡検査時には馬が頚を伸ばさないよう、しっかりと保定してもらいます。

 

 

一方、EEは喉頭蓋腹側(裏側)の基部にある披裂喉頭蓋ヒダという粘膜が

喉頭蓋の背側(表側)にきて、喉頭蓋をおおってしまった状態です。

 

粘膜が喉頭蓋をおおっている状態ですので、喉頭蓋は軟口蓋の上にあり、

喉頭蓋の形を確認することができます。

 

これが喉頭蓋の形が見えないDDSPとの違いです。

 

 

 

慢性になると、喉頭蓋をおおう粘膜が厚くなり、

潰瘍を伴うことがあります。

 

EEの原因はまだよくわかっていませんが、

喉頭蓋の形成不全を伴っている場合もあるようです。

 

EEの治療方法は、立位または全身麻酔下でEE用のカッターやレーザーで

喉頭蓋をおおっている披裂喉頭蓋ヒダを切開します。

 

予後は良好で早期に治癒すると報告されています。

 

 

 

 

降雪で峠が通行止になることもまだありますが、良い季節になってまいりました。

 

UK

 

喉頭片麻痺について①

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春がやっと訪れてきて、暖かい季節になってきました。

 

 

朝、服装で迷うことも多々ありますが、体調に気をつけていきましょう。

 

 

さて、今回は喉頭片麻痺について書いていきます。

 

 

喉頭片麻痺の馬は、

 

反回神経の麻痺によって背側輪状披裂筋が萎縮して働かなくなり、

 

本来開くべき披裂軟骨小角突起が開かなくなることによって気道が狭くなり、空気の取り込みが阻害されます。

 

 

特に左の披裂軟骨で起こりやすいとされています。

 

 

症状としては

運動中の「ヒューヒュー」という特徴的な異常呼吸音が認められます。

 

狭くなった気道(のどの入口)で起こる空気の乱流から発生する音です。

今回はまず正常な画像をお見せします。⬇️⬇️⬇️

黄色の矢印が先ほども説明した披裂軟骨小角突起です。

 

次回は異常な画像及び治療についても記載しようと思います。

 

この正常画像を覚えておいてくださいね!!

 

それではまた

K

春の足跡

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こんにちは

 

栗東もようやくあったかくなってきました。

 

 

メイちゃんは、生えてきた青草を食べるのに忙しい様子。

 

春は桜をはじめ、花がいっぱい咲いて気持ちが良いですね。

 

今回は春の足音ならぬ、足跡について書きたいと思います。

 

 

牧場に残されている足跡。

 

 

これは、牧場の馬のものです。よく見ていただくと楕円っぽい跡(右下)と丸っぽい跡(左中)があると思います。

 

馬の蹄は前後で形が多少違っており、前肢は丸っぽく、後肢は楕円っぽい形をしています。

 

 

 

次にこれ、これはおなじみの肉球の形がくっきり残ってます。

 

この足跡の主は

 

 

メッシか、と思ったのですが、大きさからどうやら違う様子。

 

おそらくタヌキのものだと思われます。

 

次にこれは?

 

 

この足跡の主は、

 

夜になるとやってくる鹿です。同じ草食動物でも鹿は偶蹄目に属しているため、馬とは違う足跡を残します。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回は同じ偶蹄目のヤギで、足の裏をちょっと確認。見事なピースサインをしている足の裏は、ほぼ平らです。

 

対して馬はというと、犬や猫の肉球がある位置付近に「蹄叉」という、周りよりちょっと柔らかい角質があります。

 

蹄叉によって、馬が歩いたり、走ったりした時に生じる地面との衝撃を吸収しているそうです。

 

体重が400〜500kg以上もある競走馬が全力疾走すれば、蹄にかかる衝撃は大変なものだと思います。

 

動物の体は良くできているのですね。

 

 

YK

 

 

 

 

 

 

キャスト固定

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人間でも骨折した時に

ギプスで固定してもらった経験のある方がいるかもしれませんが、

 

馬の場合、特に第一指(趾)骨や管骨遠位の骨折に対して

キャスト固定が行われることがあります。

 

 

具体的には、第一指(趾)骨の骨折、第三中手骨遠位の骨折、

近位種子骨の骨折、中手指節関節の脱臼などに対して適応されます。

 

(ちなみにドイツ語でギプス、英語でキャストと言うそうです。)

 

 

以前獣医さんではない方から、「普通に肢に巻けばいいんじゃないの?」と言われたことがあるのですが…

 

そもそも馬は 人間のように長時間横になって休むこともできず、

また500kg近い体重を4本の肢で常に支えなければいけないため、

 

下手なキャストを巻くと 全く意味のないものになってしまったり、

それが原因でトラブルが起きたり、外さなければならなくなってしまうこともあります。

 

にもかかわらず、一次診療をしている中では キャスト固定を自ら実践する機会はさほど多くは無いので、

この「キャストを普通に巻く」というのは、言葉で言うよりもはるかにハードルが高いものだと思います。

 

 

先日、調教中に第三中手骨の骨折を発症した症例に対し、

久しぶりにキャストを巻く機会がやってきました。

 

 

少し前にA先生の実際巻いている様子を見せていただく機会があり、

その時の動画を保存・編集し、気をつけるべきポイントも整理して、自分なりに備えて準備をしていましたが…

(A先生 いつもありがとうございます!)

 

 

自分でやるのはこれで4回目。

 

 

前回よりは上手くできたかなと思いつつも

それでもやはりイメージしていた通りには出来ず、今回も課題は残るものとなりました。

 

 

反省点を次に生かして、

次はさらに良いキャストを巻けるようにしたいと思います!

 

S

 

育成馬の乳酸値測定

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先日、育成馬の乳酸値測定を行いました。

 

 

育成馬の体力測定の方法として、

 

1.GPS機能付き心拍計を使用して、調教中の心拍数とスピードを測定する方法

2.ポータブル乳酸測定器を使用して、調教後の血中乳酸値を測定する方法

 

があります。

 

 

今回は2.の方法です。

 

調教後に、頸静脈から採血を行い

ポータブル乳酸測定器にセットしたセンサーに血液を吸引させると

15秒で測定結果が表示されます。

 

 

測定された乳酸値を用いて、調教時の馬の運動負荷を評価することができます。

 

また、乳酸値とラップタイムを用いて標準曲線をひくことにより

体力の変化を評価することができます。

 

 

調教メニューを変えた時や運動負荷を上げる時、

1〜2週間に1回、とくに強い調教をした時に測定を行います。

 

 

 

今回、使用した機器はこちら。

上から 真空採血管(ヘパリン)、ポータブル乳酸測定器とセンサー、採血用具 です。

採血した注射器から直接、乳酸値測定を行うこともできます。

 

 

なるべく運動後5分以内に採血を行わなければいけない

ラップタイムをできるだけ正確にとる

といった注意点もありますが、

育成馬の体力測定方法として取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

今は北海道も暖かくなってきています。

 

 

U

仕事道具

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馬の獣医の仕事道具には、いろいろなものがありますが
 
よく出番があるものの一つが、これ。
 

 
蹄鉗子(ていかんし)です。
 
 
これは何に使うかというと、馬の蹄を挟んで、痛みがないかをチェックするものです。
 

 
このように肢を人の足で挟んで固定し、蹄鉗子で圧痛をチェックします。
 
 
ちなみに後肢の場合は、馬の肢を膝で挟むのではなく、腿の上に置いて保定します。
 
 
獣医だけでなく、装蹄師もこれを使います。
 
皮膚であれば腫れたり、痛みのある箇所に熱を持ったりしますが、蹄は固く、炎症部位が分かりにくいことも多いです。
 
そのためこの蹄鉗子で場所を変えて圧迫することで、痛みのある場所を特定できます。
 

 
蹄底の圧迫。
 
 

 
蹄叉の圧迫。
 
 
 
蹄鉗子はよく、挫跖(ざせき)の診断に使われます。
 
挫跖とは、馬が石などの硬いものを踏んだどきに、蹄底が圧迫され、炎症が起きてしまうことです。
 
蹄の内部で出血し、化膿してしまうこともあります。
 
騎乗していて、あれっ?と思ったら急に跛行して、蹄に熱を持ったり、繋に触知できる指動脈の拍動が亢進している、という場合、挫跖であることが多いです。
 
馬はあの小さい蹄で約500kgもの体重を支えているため、挫跖などで蹄に炎症が起きた場合、重度の跛行を示すこともよくあります。
 
そういったときに、この蹄鉗子を使って、蹄の痛みを調べます。
 
 
 
ただし蹄の痛みをもたらすのは挫跖だけでなく、蹄葉炎、蹄底膿瘍、蹄骨の骨折などの可能性もあります。
 
痛みが顕著であったり、消炎剤を投与しても痛みがあまり引かない場合にはレントゲン等の検査をして、異常が無いか調べます。
 
 
 
この蹄鉗子試験をする上で気をつけなければならないのは、馬が痛みを感じたときに、強く肢を引き抜こうとしたり、飛び上がったりすることもあります。
 
そんな場合に備えて、蹄の保定はあまり強固にし過ぎず、危ない場合には肢を抜けるような状態にしておきます。
 
暴れた馬に足を踏まれた場合には、こちらが大怪我をすることにもなりかねません。
 
 
正しい診断・治療のためには、視診・触診だけでなく、こういった道具を適切に使っていくこと、そして自分が怪我をしないこともとても大事なのです。
 
 
 
 
 

 
餌を要求するメッシ。
 
 
 

 
もらえなくて怒りの爪研ぎ。
 
 
 
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