寝違えた?

寝違えた?

新年あけましておめでとうございます。
 
今年もよろしくお願いいたします。
 
 
 
 
年末年始ももちろん、競走馬の牧場は稼働しています。
 
1月1日くらいは騎乗はせずに世話だけ、というところもありますが、関係なくバリバリ騎乗している牧場もあります。
 
地方競馬場では正月競馬も連日開催されており、むしろ忙しい時期かもしれません。
 
 
この寒い時期でも、朝の暗いうちから働いている牧場スタッフには、頭の下がる思いです。
 
 
 

 
 
 
「なんでか分からないけど跛行している」という相談を、たまに受けます。
 
今回診たのもそんな馬でした。確かに馬房から出してもらうと、常歩でも跛行しているのが分かります。
 
 
しかしその担当者の言う通り、見たところ傷や腫れている箇所も見当たりません。
 
ざっと触ってみても熱感などもなし。でもはっきりと、右前肢が跛行しています。
 
 
 
ならば関節をチェックしてみます。
 
 
上から順に、肩関節、次いで肘関節。
 
 
と、肘関節を曲げた時に馬が嫌がり、前肢を下ろしました。
 
 
それでは、と左前肢で同様に肘関節を曲げると、それほど嫌がりません。なので痛みが、右の肘関節周辺にあることが分かります。
 
そこで前肢を上げて、前肢の内側の付け根、脇の辺りを触診してみます。
 
 
傷などはありませんが、浅胸筋〜横行胸筋のあたりでしょうか、押すと鋭く馬が反応し、飛び上がる箇所がありました。
 
他に痛みのある箇所も無いことから、そこが跛行の原因だろうと判断し、消炎剤を投与しました。
 
 
 
この馬の跛行は、前日の朝、乗る前からあったとのこと。その前の日は普通だったことから、夜の間に痛めた可能性があります。
 
 
 
 
こういう場合、疑われるのが「寝違え」です。
 
人間もよく、「寝違えて首を痛めた」などということがありますが、馬の場合は少し勝手が違います。
 
 
馬で寝違えというのは、馬房で寝返りを打った際に、身体と壁の間で脚がつっかえたり
 
馬房の隅に身体が挟まって、身動きが取れなくなることを言います。
 
 

 
馬が横になったときに、画像の赤丸の部分に脚や身体がはまり込んでいるような状態です。
 
 
 
最初に聞いたときには、なんて間抜けな動物なんだと思ったものですが、どうにか身体を起こそうとした馬が暴れて大きな怪我をしたり
 
長時間不自然な体勢で固定されることにより、血流が阻害され、命の危険に晒されることもあるため、意外と馬鹿にはできない状態です。
 
 
 
牧場で寝違えが発生した場合、急いで馬をおこさなくてはなりません。
 
そのためすぐに人手を集めます。そしてみんなで馬の身体を押したり、ロープを脚にかけて引っ張って、馬を馬房の中央に戻します。
 
その際にも暴れる馬に蹴られたりすることのないよう、注意が必要です。
 
 
 
今回診た馬も、担当者も「そういえば朝来たときに、馬着がずれていた」と言っており、寝違えや、夜の間にどこかに引っ掛けた・暴れて変に脚を開いた、
 
などのアクシデントがあった可能性があります。
 
 
二日目に診たときには、跛行はまだ少し見られましたが、前日よりは改善していました。そのため再度消炎剤を投与。
 
その次の日に馬が移動予定のため、これ以上の継続治療はできませんでしたが、移動先に申し送りをしてもらいました。
 
 
 
 
以前、馬房で怪我をした別の馬を診たとき、「朝来たら、吊るしてあった水桶が、天井近くにまで持ち上がっていた」と言われたこともあります。
 
夜の間に何があったのか?はっきりとは分かりませんでしたが、怪我をしていたことは事実。
 
 
安全と思われる馬房であっても、怪我の可能性は無いわけではないのです。
 
 
 
 
 
 
 

 
新年の快哉を叫ぶメッシ。
 
 
 
 
 
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