血清アミロイドA(SAA)

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馬で行う血液検査、

中でも今日は血清アミロイドAについてのお話です。

 

血清アミロイドA(:SAA)は、

馬で有用な急性期反応タンパクのひとつです。

 

感染や組織障害などの刺激によって、

マクロファージがIL-6を産生し、

それによって肝細胞でSAAが産生されます。

 

SAAは、リンパ球の増殖・血小板凝集・食作用を阻害し、

また単球や好中球の遊走・プロスタグランジン合成・メタロプロテナーゼの活性を促進する

などの作用を持つそうです。

 

さらに馬では SAAと活性・作用は似ているものの

構造が少しだけ違うアイソフォームというものが、

肝臓以外でも見つかっているそうで、

乳腺上皮細胞から初乳中に分泌されたり、

関節の軟骨細胞や子宮内膜からも分泌されます。

 

このように SAAは特に急性期における

全身や局所の免疫反応の形成に関わっていると考えられてます。

 

 

健康な馬のSAAは、10μg/ml以下とされていますが、

病態によっては1000倍にも上昇することもあります。

 

臨床の現場では、

SAAの値から 体内で起きている炎症反応の状態を推測して、

「どの薬を使うか」「いつまで薬を続けるか」

といった判断をするのに非常に役立てます。

 

 

検査会社に外注で検査してもらうことはできますが、

往診現場では治療までにタイムラグが生じてしまうため

現場でも使える検査キットも販売されています。

 

日本で市販されている

SAA値を定量的に測定できる検査キットがこちら。

 

 

遠心して得られた血清をチューブに1μL入れて、試験紙の端を浸し、

10分後に矢印部分のラインを判定表と比べて結果を出します。

 

(ただしこちらは最近生産中止になってしまったそうです…。)

 

 

さらに海外では、このようなキットが販売されています。

 

 

こちらも前述と同様ですが、

採血管の全血を少量希釈して、キットに滴下するだけでとてもお手軽、

現場で10分で結果を数値で出してくれる優れモノ!

 

 

あったらとても便利!!!

。。。なのですが、今のところ 日本では販売されていません。

 

 

このように

往診先で必ずしもすぐに検査できる状況とも限らないので、

やはり数値だけに頼るのではなく、

状態を見て 自分で判断する力も養う必要がありますね。

 

 

水族館のメガネモチノウオ。

 

 

名前の由来は、

目の横の線状の模様が 眼鏡のつるにみえること。

おでこのコブは年をとると大きくなるそうです。

 

この方は、いつも定位置で休んでいます。

可愛い顔で、個人的にお気に入りです。

 

S

 

角膜潰瘍

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角膜潰瘍についてです。

 

馬の角膜潰瘍は創傷性角膜炎と同意義とされております。

 

 

多くが競争中の外傷による角膜表層の損傷でありますが、

感染(Pseudomonas属などの細菌、Aspergillus属などの真菌)

により深層まで損傷が及ぶことが稀に発生します。

 

内因性要因として、

涙液や眼瞼の異常により角膜保護機能の喪失に起因するものがあります。

また、重症化した症例では、

角膜実質でのタンパク分解酵素(プロテアーゼ)の活性上昇により、

角膜の溶解が進行していきます。

 

 

 

症状として、眼瞼の痙攣、流涙、結膜充血などがありますが、

いずれも眼科疾患では多くみられる症状です。

また、ぶどう膜炎の合併がみられるケースもあります。

 

 

 

確定診断に有用とされているのが、フルオレセイン染色です。

 

 

色素剤を点眼すると、

角膜の損傷部位に色素が浸透し(矢印)損傷部位を確認することができ、

角膜潰瘍の診断に有用とされています。

 

潰瘍の深さはスリットランプを用いて測定することができます。

 

 

 

 

失明の可能性もあるため、治療は急を要します。

主に、抗菌薬、抗真菌薬(1日数回)の点眼を続けることが推奨されます。

 

ぶどう膜炎の併発症例に対しては、アトロピン点眼、NSAIDsの全身投与を実施します。

重症化予防として、抗プロテアーゼ(自家血清、EDTAなど)の点眼も行われます。

 

 

また難治性症例に対しては角膜切開術、角膜移植 等の

外科的療法が適応とされます。

 

 

 

投薬治療を行う際に注意するべき点として、

ステロイドの投与は禁忌とされています。

感染を助長する恐れ、治癒遅延の可能性があるからです。

 

また、アトロピン点眼を長期間行う場合、消化管の運動機能の低下により

疝痛症状を示す可能性があるため慎重に投薬する必要があります。

 

 

 

さらに、治療中の眼球保護のため眼帯を着用する際にも

眼帯内での菌の繁殖を最小限にするよう

通気口のある眼帯の使用や、長時間の連続着用を避ける等

の注意が必要です。

 

厩舎環境を綺麗にすることも、感染のリスクを減らすために大事な事だと考えられます。

 

 

損傷の程度により予後は異なります。

損傷が浅い症例、軽症である場合は、

検査で検出できない程度まで治癒する可能性があります。

 

 

しかし、

重症化、慢性化した症例では治癒後に瘢痕化が残ることもあります。

 

 

慢性化した角膜潰瘍の症例です。

視覚は維持できていますが、瘢痕が消失する事はないでしょう。

 

 

 

 

 

メイとドマーニ号です!

草に夢中で、カメラに気がついてくれません。笑

 

 

 

Y

 

プレレポジトリー実施中

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当診療所では、現在、1歳馬のプレレポジトリーを実施しています。

詳細については こちら をごらん下さい。

 

プレレポジトリーを行うことで、外見上ではわからない疾患がみつかることがあります。

 

例えば

 

喉頭蓋下嚢胞

胎児期の発生過程の異常によって、喉頭蓋の下に嚢胞ができた状態です。

大きいものですと、嚥下(飲み込み)が困難になり、誤嚥性肺炎を起こす可能性があります。

内視鏡下での手術で切除でき、予後は良好とされています。

 

 

離断性骨軟骨症(OCD)

発育の過程で関節軟骨に壊死がおこり、骨軟骨片が剥離した状態です。

発症しやすい関節、骨の部位は以下の通りです。

 

・飛節:脛骨中間稜、距骨外側滑車、脛骨内側顆、距骨内側滑車

・球節:第3中手(足)骨遠位背側、第1指(趾)骨近位掌(底)側、第1指(趾)骨近位背側

 *カッコ内は後肢での名称

・膝関節:大腿骨外側滑車稜、大腿骨内側滑車稜、膝蓋骨

・肩関節:上腕骨・肩甲骨関節窩

 (ただし、肩関節はレポジトリーで撮影されない部位で、ポータブルでは撮影は難しいです。)

 

通常、関節液の増量による腫れに気が付き、レントゲン検査を行う場合が多いのですが、

腫れなど症状がなく、レポジトリーでみつかることも多いです。

(逆に症状があるのに、レントゲン所見がみられないこともあります。)

 

一般的に腫れや跛行などの症状がなければ、手術をしなくても競走能力に大きな影響を与える

可能性は低いですので、症状があれば手術を検討します。

 

とくに飛節のOCDは術後の予後も良いとされていますので、

市場に出すために、症状がなくとも手術を選択することもあります。

 

 

今年の市場日程はすでに決定・公表されています(こちら)。

 

市場に向けての準備のために、プレレポジトリーを活用していただけたらと思います。

また、各市場レポジトリー検査も行っておりますので、お問合せ下さい。

 

ご連絡はカワタ エクワイン プラクティス 日高まで

Tel:01456−7−8523

E-mail:info@kawata-ep.com

 

 

 

ウォブラー症候群の検査方法を書くと言ったのに…

変更して申し訳ありません。

 

U

 

眼の検査

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先日、研修に行ってきました。

「第21回獣医師生涯研修」というもので、栃木県の那須塩原市にある、地方競馬教養センターで毎年行われています。
 

こんな感じで、2週間毎日違う研修を受けることができます。
 

 
 
 
 
何時間受けても受講料は一律。宿泊可、申し込めば3食付いてきます。
 
生馬や屠体を使って実際に練習することができる、とても貴重な機会です。

 
 
 
 

その研修で学んだ眼瞼の神経ブロックを使って、馬の眼の内部を観察してみました。
 
 
これは眼や瞼の治療のときに使う神経ブロックです。
 
 
瞬きを抑えられるため、眼球のエコー検査をするときにも使います。
 
 
エコー検査では、網膜剥離や虹彩癒着、白内障などの診断ができます。
 
 
 
今回ブロックするのは3箇所。
 
 

耳介眼瞼神経ブロック、

 

眼窩上神経ブロック、

 

眼瞼下神経ブロック

 

の3つです。
 
 
触診して場所を確かめた後、それぞれの神経の辺りに針を刺し、浸潤させます。

 

瞼に対する反応が無くなったのを確認した後、エコーで眼球の状態を確認しました。
 
プローブは眼瞼に当てます。

 
 
水晶体に、ぽつぽつと高エコー領域が確認できます(特に縦断面)。
 
これはおそらく、軽度の白内障だと考えられます。この馬はもう17歳なので、年齢によるものでしょうか。
 
外観上では特に白濁も見られず。視力にも、そこまで影響は無さそうです。
 
 
 
 
 
人間ならば、じっとして!痛くても我慢して!と言えば静かにしていてくれますが、馬ではそうはいきません。
 
 
 
正しい診断・治療をするには、こういったテクニックも大事なのだということを学びました。
 
 
 
 
  
 
 
 


 
 
あれ?いない?
 
 

 
 
最近はこっちがお気に入り。
 
あったかいしいつでも作業を邪魔できる。いいことずくめです。
 
 
 
 
 
 
N
 
 

繋皹(けいくん)

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この時期にみられる繋皹(けいくん)のお話をします。

 

繋皹は冬の時期に多くみられ、別名が多くあります。

沼地熱、グリースヒール、朝露中毒、疣贅性蹄皮炎etc…

 

カラーアトラス馬の蹄より

 

繋皹はつなぎの掌側面(ヒトでいう手のひら側)にできる滲出性の皮膚感染症です。

感染を起こすと、発赤や痂皮を形成し

細菌感染が主な原因でStaphylococcus.auresuDermatophilus congolensisが多いとされています。

(他の場合もあります)

 

新馬の医学書より

 

なぜつなぎに出来やすいのか…

地面に近く、泥や排泄物が付きやすい(汚れる)

湿った環境下でなりやすい(細菌が好む環境)

地面に近いので、植物の切り傷等をつくりやすく(傷から感染していく)

被毛が多いから(汚れやすい)

という感じです。

 

ただし、被毛が多いからといって

被毛をカットしてしまうとそれはそれで皮膚病が出来てしまうこともあるので

注意しなければなりません。

 

前肢より後肢が好発し、皮膚が白い所にできやすいと言われています。

 

こんな感じ(この馬は健康な皮膚です)

 

細菌が白い部分に引き寄せられるのですかね。

でも、白くない部分にもできるということは…

 

治療法としては

馬房内の環境を清潔にし、乾燥した状態を保つこと。

ただ皮膚が乾燥しすぎて、ひび割れができてしまうこともあるので

適度な環境を保つこと。

 

スクラブで洗浄し、乾燥させ、清潔度を維持します。

また洗浄する際には冷たすぎず、熱すぎない程度のぬるま湯で洗ってあげます。

 

場合によっては薬を塗りながら、治療を行っていきます。

 

 

予防法は

馬房内の環境を清潔にし

適度な温度の水で洗浄を行います。

 

ただ洗いすぎはヒトもそうですが、あかぎれなど出てきますので

何事も適度に…ということです。

「繋皹」は「つなぎ」の「あかぎれ」というものですので…

 

 

 

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牧場さんのねこちゃん。

犬みたいにいつもスリスリしてくれます。

 

可愛すぎる…

 

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I

潜在精巣(陰睾)

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精巣は体温より5°C程低い陰嚢内に存在することで、

精子を産生できるようになります。

 

しかし精巣は

最初の発生の段階から陰嚢の中でできるのではなく、

 

胎児の時に腎臓に近い体の中で作られた後、

お腹の中を移動し、 鼠径管を通って陰嚢の中に降りて来ます(=精巣下降)。

 

この精巣下降は

馬では通常 生まれる1ヶ月前から出生後10日の間に起こるそうです。

 

ところが、何らかの要因でこのプロセスが上手くいかないと

精巣が腹腔内や鼠径管内に留まったままとなり、

この状態を ”潜在精巣 / 陰睾”と言います。

 

 

精巣下降のメカニズムは複雑で、

 

潜在精巣になる要因も

精巣導帯・精巣上体・鞘状突起など 鼠径部や陰嚢内の発生や発達に異常があったり、

また種々のホルモンが影響していたりと、様々あるとされています。

 

 

例えば犬の潜在精巣は、腫瘍化する可能性が

通常に比べて10倍以上も高くなるそうですが、

 

馬の精巣腫瘍自体が稀で、

潜在精巣と精巣腫瘍発生の関係も明らかになっていないそうです。

 

しかし潜在精巣でも

雄性ホルモンであるテストステロンは産生されるため、

 

通常の牡馬同様(もしくはそれ以上の場合もあるそうですが)

ウマッケが強かったり、

 

ウソかマコトか「調教時に、馬が陰睾を気にしている!」

と相談されることもあったり、

 

またはっきりとはわかっていませんが

一般的には馬では遺伝的な要因もあると考えられていることから、

 

馬の潜在精巣は 外科手術で切除するのが一般的です。

 

(馬でも ごく限られた適応例には

hCGやGnRHを用いたホルモン治療も効果が期待できるそうです。)

 

潜在精巣がどこにあるかによって アプローチの仕方も変わってくるため、

鎮静下でしっかり触診したり、直腸検査や超音波検査で確認します。

 

設備があれば腹腔鏡を用いて立位で行うこともありますが、

一般的に手術は全身麻酔下で行います。

 

(画像:Manual of Equine Field Surgeryより)

 

外鼠径輪のすぐ近くにあってすぐに摘出できる場合もあれば、

腹腔内にある場合だと 少し手技が煩雑になるようです。

 

 

下の写真は、

美浦のA先生のところで見学させていただいたときのもの、

いずれも左側陰睾の症例です。

 

 

ちなみに潜在精巣の対処法は

・人間:精巣を陰嚢内に手術で固定する方法

・犬:腫瘍化する可能性があるため摘出する方法

が それぞれ一般的なようですが、

 

例えば競走馬の片側生の潜在精巣の場合、

「牡馬限定のレースに出るから 潜在精巣だけ摘出して、

正常な方の精巣は残しておいてね!」というケースもあります。

 

また象の精巣は正常な状態で体内にあるそうです…何故。

 

不思議な臓器、精巣。生命の不思議です。

 

たらの白子が美味しい季節になりました。

 

 

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