副手根骨について

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腕節をX線検査をしていた時のこと、

「この骨(=副手根骨、矢印)はどうしてここにあるの?」という質問を受け、

この副手根骨という骨について調べてみました。

 

 

馬の腕節(手根関節)は、

人間で言えばちょうど手首の部分に当たる関節です。

 

腕節は、副手根骨・橈側手根骨・中間手根骨・尺側手根骨・第二手根骨

・第三手根骨・第四手根骨の計7つの小さな骨が手根間靭帯で繋がれながら、

橈骨及び中手骨と 主要な3つの関節(橈骨手根骨関節・手根骨間関節・手根中手関節)

を構成することで成り立っています。

 

手根骨は、関節軟骨と関節内の滑液と共に

前肢にかかる衝撃を吸収するのが主な働きですが、

 

この中において 副手根骨は掌側に位置し、

外側尺骨筋と尺側手根屈筋が付着していています。

 

 

 

これらの筋肉は主に上腕骨の外側上顆に始まり、

収縮することとで “手根関節を屈曲する” 作用が生まれます。

 

またそれぞれ別の神経支配を受けている(外側尺骨筋は橈骨神経・尺側手根屈筋は尺骨神経)ため、

2つの筋肉が同時に収縮しないことで 副手根骨骨折が発生する、

という病態もあるそうです。

 

 

(*参考画像:「馬の跛行ーその原因、症状及び治療ー」J.R.ルーニー著(日本語版) p.64より)

 

 

ちなみにパンダの副手根骨はよく発達しており、

これが “第7の指” とも言われるような 手首膨らみとなることで、

竹を掴んで食べるのに役に立っているとか。

 

 

副手根骨は英語でいうとaccessory carpal bone、

accessoryには “付属品/装飾品” の他に “共犯者” という意味があるそうですが、

機能を考えて見ると、単なる付属の骨ではなく きちんと役割を担っている骨なのだなと感じます。

 

 

 

関東の拠点が船橋に移動しました。

コツコツ頑張っていきたいと思います。

 

S

 

たいせつな鼻のお話

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今回、はじめてブログを書かしていただきます、

当プラクティスの新人獣医師 T です。

今週は馬関係者なら日々の管理で興味を抱くであろう、鼻の話をします。

 

 

Ⅰ. ) そもそもなんで鼻が大切なのか?

 

ウマは他の動物と異なり、口腔が胃のみにつながっている。

そのため、口呼吸ができない仕組みになっている。

なので何らかの原因で鼻腔が詰まると呼吸が苦しくなってしまう。

さらに悪いケースでは辛うじて呼吸ができる状態になってしまう。

 

 

Ⅱ. ) では、鼻腔が詰まる病気ってどんなものがあるのか?

 

『蓄膿症 Empyema』

 

副鼻腔炎や上部気道炎(鼻から咽頭まで)、歯牙疾患は放置すると、

副鼻腔の細菌感染またはこの部位へ感染の波及が起こることがある。

 

このような病気を蓄膿症といい、

軽度から重度まで、病状には大きく差がでる。

 

軽度な蓄膿症の多くは膿性鼻汁がみられるが、

悪化すると鼻汁も少ししか出なくなり、それらが副鼻腔に貯留する。

また、病状の悪化と相応して、徐々に呼吸がしにくくなる。

 

ウマは私たちのように鼻をすすって分泌物を口から吐き出すことをしないのかもしれない。

 

そのため、膿が徐々に貯まり内側から鼻の構造を圧迫した結果、

外観にも変化がみられることもある。

さらには、もう一方の鼻腔も狭くなり、さらに呼吸が苦しくなる。

 

このような状態のときに頭蓋骨をコンコンとノックすると、

物をいっぱいにいれた木箱に似た音が聞こえる。

 

 

 

このように蓄膿症の診断には

おもに飼い主の稟告、レントゲン検査、内視鏡検査が有用だ。

 

治療には抗生物質を用いるが、症状を改善できない場合がある。

 

その際に選ぶ手段として円鋸術というものがある。

 

これは、外側から鼻腔に向かって骨に丸い孔をあける外科手術である。

その孔を通して繰り返し鼻道を洗浄し、貯留している膿を抜く。

 

この治療には毎日やる根気強さが必要だ。

 

 

 

最後に、飼い主がやるべきことは、

結局のところ、言わずとも、

日常管理での状態チェックが最重要項目となります。

 

鼻はウマにとって代替不可能な呼吸の部位のひとつです。

 

上記のような病気の悪化で、

飼い主も馬も精神を削る思いで病気に向き合うことにもなりかねません。

 

顔面の腫れや鼻出血などの異常がみられたら自己判断でそのままにせず、

すぐにかかりつけの獣医さんにスマホから電話相談しましょう。

 

 

その行動が大切な愛馬との健康な生活へとつながるから。

 

 

T

馬のフケについて

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最近、急に暖かくなってきましたね。

私は馬の獣医になってから、初めての夏を迎えようとしています。

 

この季節、競馬場へ行くと

「ちょうどレースの時にフケでさ」

と、いうような声を厩務員さんから聞くことがあります。

 

「フケ」とは、牝馬の発情のことを言います。

 

牝馬の発情期は、春先から9月頃までの数ヶ月間。

まさにこれからの季節ですね。

 

周期は約21日とされ、

5〜7日程度の発情期、約14日の無発情期を繰り返します。

 

発情期の牝馬は、

多くの場合、他の馬に対して過剰に興奮するようになります。

気性が穏やかな馬でも、威嚇したり、暴れたりするようになることもあるそうです。

 

 

 

発情の兆候として、

尾を左右に揺らしたり、後肢の歩様がぎこちなくなったり、

馬を引く人に執拗に甘えるような仕草をするようです。

 

身体所見として、

陰部の腫脹や、膣からの分泌物がみられます。

 

さらに、排卵時には痛みを伴うこともあり、

一見、疝痛を起こした時のような症状がみられることもあります。

 

海外では、発情による興奮に対して、「30日間トライアル」として、プロジェステロン合成剤の経口投与を30日間続けるという方法があるそです。(参照:Mares Behaving Badly:Is it Estrus or Something Else?)

 

日本でも、ホルモン剤の注射は行われているようですが、競馬場内では一般的に投薬による治療は行われておりません。

 

 

耳を横に倒し威嚇したような馬がいた場合、

怒っているだけなのか?恐怖や痛みによるものなのか?

あるいは、発情による興奮なのか見極める対応する必要があります。

 

稀に、フケによる興奮でレースを走りきり勝利する馬もいるようですが、

「できたらレースとは被らないでほしいな」と、

厩務員さんは言っておりました。

周期を計算し対策を考えたり、周りの環境に気を使いながら

夏が終わる間までは付き合っていくしかないのかもしれません。

 

この時期ならではのお悩みもありますが、

 

 

 

初夏ならではの美味もあります。

先日、厩務員さんからいただきましたこちら

九十九里で採られた「白子玉ねぎ」です!

肉厚で甘みもたっぷり、バターをのせて温めただけでとても美味しくいただけました。

 

Y

ウォブラー症候群~神経学的検査

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今回はウォブラー症候群の疑いがある場合に行う検査についてです。

通常の跛行診断を行ってから、神経症状を疑う場合は、以下の神経学的検査を行います。

 

1.背部および骨盤部を圧迫し、馬の反応をみる
問題のある馬は脊椎が押し下げられ、しゃがむ。

 

2.尻尾と肛門の弾力をみる
腰部や仙骨部に損傷のある馬は、尻尾や肛門が弛緩している。

 

3.皮下または皮膚感覚をみる
ボールペンの先でタッチして、皮膚や筋肉を動かすか、みる。

 

4.頸部の可動性をみる
ゆっくりと馬の鼻が肩の後ろに届くまで屈曲させる。
頸部に痛みがあると、屈曲を拒絶するか、体をねじろうとする。

 

5.肢の配置テスト
肢を反対肢とクロスさせるか、幅広い場所に置き、すぐに姿勢を戻せるかみる。
ただし、明らかな症状を呈する馬には、バランスを崩すので、行ってはいけない。

 

6.尻尾の動揺をみる(馬の引手には経験が必要)
常歩で馬の尻尾を左右から引っ張る。
問題のある馬は、簡単に引っ張られ、尻尾を離した時に過剰に矯正するか反対側に揺れる。

 

7.非常に小さい円運動をさせる
引き手が軸になって馬をまわらせる。
正常な馬は、外側前肢を内側前肢の前に出し、内側後肢を外側後肢の前に出す。
問題のある馬は、混乱して逆になったり、外側前肢を上げずに軸にして回転したりする。
また、後肢を極端に幅広く振る。
重症では、自身を踏みそうになったり、つまずいたり、倒れそうになったり、
内側肢を軸に回転したりする。

 

8.傾斜を上り下りさせる
問題のある馬は、傾斜を下る時、鎮静されたようになり、後肢の球節をナックルさせる。
傾斜を登る時は、蹄尖で歩き、蹄尖と飛節を外側に旋回させる。
頭を持ち上げて行うと、この兆候がより良くわかる。

 

9.馬を後退させる(少なくとも10歩)
試験者は横側から観察する。
問題のある馬は、後肢の遅れや、いずれかの蹄尖をひきずる。

 

10.自由運動(重症でなければ、パドックを自由に駆け回らせる)
問題のある馬は、キャンター時に後肢がウサギ跳びになり、
止まろうとする時に後方へナックルする。
軽症馬は、トロット時にアニメのような歩様になる。

 

11.跳躍(経験豊富な試験者がやわらかい足場でのみ行う)
問題のある馬は、片方の肢が地面から離れて飛ぼうとする時に、倒れそうになる。

 

12.目隠し(経験豊富な試験者がやわらかい足場でのみ行う)
脊髄に問題のある馬では、このテストはうまくいかないので、通常は行わない。
脳もしくは中耳に問題のある馬は、倒れるか傾き始める。

(equinewobblers.com、Equine Neurological Examinationより)

 

とくに、9の後退と7の円運動は、診療でよく使用しています。

 

 

 

U

競馬人生

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この春入社いたしました K     と申します。

私は競馬が好きなので今後は競馬のことにも触れていこうと思います!

 

 

今週の天皇賞春も終わり、無観客でのレースが続いてる競馬界ですが、

 

競馬が持っている力は底知れないものだなぁと感じている今日この頃です。

 

 

今年の天皇賞春は1番人気の馬がゴール前でギリギリ差し切って、痺れるレースでした。

 

 

来週から5週連続でG1レースがあるので、

 

週末は皆さんも競馬を観てはいかがでしょうか。

 

 

来週はNHKマイルと短距離の強い馬たちが競うレースです。

 

 

楽しみにしながら獣医の仕事に慣れるように

 

日々精進していこうと考えている新人獣医の初ブログを暖かく見守ってください。

 

 

多くの馬に接し、異常にいち早く気付いてあげられる獣医になるためにも、

 

我慢強く知識と経験を増やしていこうと思います。

 

今はこのような状況で不安が膨れていることと思いますが、

 

一丸となって乗り越えましょう!

 

 

p.s.夏の札幌競馬場での写真です。

 

 

K

虫!

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昨日・今日と、とても良い天気です。
 
 
 
しかし気温が上がってくると現れる、厄介なやつがこれ。
 
 

(画像:Wikipediaから引用)
 
これは、ブユです。
 
地域によって、ブヨ、ブトとも呼ばれます。この辺では大抵の人が、ブヨと呼んでいるようです。
 
 
 
体調は3-4mm程度。春〜秋にかけて活動します。
 
とても小さな虫ですが、彼らは吸血害虫です。
 
 
刺されると、腫れます。そしてものすごく痒いです。
 
私も最近、首・手首・足首を同日に刺されたのですが、全ての箇所の痒みが約1週間続きました。
 
周辺がパンパンに腫れることもあり、場所によっては関節を曲げるのにも痛みが伴うことも。
 
 
 
 
もちろん、馬も刺されます。
 
 
虫が体に止まると、彼らは尻尾を振って追い払うのですが、ブユは一度吸着すると、その程度では離れません。
 
また、皮膚が薄いのか、お腹の下によく止まっているため、尻尾が届かないことが多いのです。
 
そのため放牧中にお腹の下を見ると、丸々と血を吸ったブユが、びっしり付いていることも…
 
ざっと擦ると、手のひらが血で真っ赤に染まります。ぞっとしますね。
 
 
 
 
虫刺されによって蕁麻疹を引き起こすこともあります。
 

 
うっすら蕁麻疹。
 
 
これは虫刺されによる腫れなのか?蕁麻疹か?虫刺されに対する反応で引き起こされた蕁麻疹なのか?
 
と、迷うことも。
 
 
 
 
防虫スプレーも、専用のものでなければあまり効果がないそう。
 
肌の露出を避けるなど、物理的な対策が必要なようです。
 
 
 
 
 
ブユは水辺に産卵し、幼虫・蛹は水中で生息します。
 
ブユの幼虫は、水質指標では「きれいな水」に生息するとされています。なので、ブユのいる環境には、周辺にきれいな川がある、ということになります。
 
それはそれで、喜ばしいことなのですが…やはり刺されて不快なことに変わりはありません。
 
 
自然の豊富な環境に行ったり、牧場に実習に行く学生さんたちも、ハエやアブ、蚊も含めた虫対策はして行った方がいいかもしれませんね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
朝から消臭スプレーを振りまく獣医を見咎めるメッシ。
 
 

 
「それを今すぐやめるニャ」
 
 

 
「やめるニャ!!」
 
 
 
 
N