投薬後の蕁麻疹

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関東では、連日暑い日が続いており、

競馬場では向日葵が咲き始めています。

 

今回はそんな往診先で遭遇した、ある症例についてです。

先日、鎮静剤(デトミジン 6mg)を静脈から投与した直後にこのような症状が見られました。

臀部に多数の丘疹がみられます。

 

 

これらは、鎮静剤投与直後に発生したことから、

薬の投与によるアレルギー性の蕁麻疹であると考えられます。

 

今回はデトミジン投与後の反応でしたが、

勿論、多くの薬品に、

アレルゲン(アレルギーを引き起こす元)となる可能性があり、

アレルゲンが生体に入ることで過剰な免疫反応が起こります。

 

それに伴い炎症物質(ヒスタミン、ロイコトリエン 等)が放出され、

全身、あるいは局所を障害(アレルギー反応)するのです。

 

 

皮膚の蕁麻疹などの、急性の症状が見られた場合の対処法として、

まず、強い炎症反応を抑制するため、

・副腎皮質ホルモン剤の投与

(例)デキサメタゾン、プレドニゾロン 等、

 

次いで、

・抗ヒスタミン剤の投与

(例)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン 等、

抗ヒスタミン薬に関しては、馬の蕁麻疹における第一選択薬となっています。

 

これらの投薬が推奨されています。

 

今回、私の遭遇した症例は、

抗ヒスタミン薬の経口投与を数日間続けて蕁麻疹はほとんど消失しました。

 

アレルギー反応の症状は多岐にわたり、

軽度の蕁麻疹から、全身性のアナフィラキシーショックのような重度の症状を引き起こすこともあります。

 

予想することが難しく、突発的に出くわすことが多いアレルギー反応。

症状や対処法について知っておくことが、いざという時の備えになります。

一つ一つの症例を大切に、日々勉強に勤しんでいこうと思います。

 

 

 

さて、

勉強も大事ですが休憩も大事ですよね。

 

 

 

先日、鋸山の麓まで行ってまいりました。

 

夜のフェリーからの写真です。

涼しい風が心地よかったです。

 

 

 

 

Y

 

馬の予防接種 〜日本脳炎ウイルス〜

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予防接種とは特定の病気にかかりづらいように、

免疫を作ることを目的として実施されます。

 

今、世界中で流行っているコロナウイルス(COVID-19)に対しても、

ワクチンが作られているのもそのためです。

 

また、馬にも予防接種があります。

 

馬インフルエンザ、日本脳炎、ゲタウイルス、破傷風などに対する予防接種が実施されていて、

日本脳炎が発生する可能性が高い時期を考慮し(蚊の発生など)、

5〜6月の時期には3種混合ワクチン(馬インフルエンザ、日本脳炎、破傷風)等を接種します。

 

今回はその中でも日本脳炎ウイルスについて書いていきましょう。

 

 

日本脳炎は法定伝染病であり、人獣共通感染症です。

 

また、その原因となるウイルスは

フラビウイルス科 フラビウイルス属 に属します。

 

日本ではコガタアカイエカによって媒介され、

蚊の唾液腺で増殖したウイルスが吸血の際に伝播されていきます。

 

馬に感染すると発熱を起こし、その後、沈鬱、興奮、麻痺などを引き起こします。

さらにひどい症状の場合は死亡する例もあります。

(チクサン出版社/馬の医学書 より)

 

なので予防接種をし、

日本脳炎ができるだけ起きないように防がなければならないのです。

 

さて今月末は、宝塚記念‼︎

みんなで競馬を盛り上げましょう!

 

K

 

ワクチン、風土病

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5-6月はワクチンの季節です。
 
5月はインフルエンザ・日本脳炎(基礎)・破傷風の3種混合ワクチン、
 
6月は日本脳炎(補強)・ゲタウイルスの2種混合ワクチンを使うことが多いです。
 
 
 
 
 
1971年、国内で馬インフルエンザが流行し、翌年に「軽種馬防疫協議会」が設立されました。
 
馬の伝染性疾病の予防・蔓延防止を目的として活動しています。
 
 
その軽種馬防疫協議会の報告によると、馬インフルエンザはフランス、オランダ、アメリカでは、2020年1-3月の間で既に発生しています。
 
 
海外からの輸入馬もみられる今、現在日本に存在しない疾病であっても、感染拡大を防ぐためにワクチンを接種することは大切なのです。
 
 
そして日本においては、馬インフルエンザは2008年以降、馬の日本脳炎は2003年以降発生していないようですが、
 
破傷風は毎年のように発生しているようです。
 
競走馬では、馬インフルエンザ以外はワクチン接種は絶対ではないのですが、日本脳炎・破傷風ともに恐ろしい病気なので、ワクチン接種をお勧めしています。
 
 
 
 
同じ報告を見ていると、「腺疫」の項目に、
 
「国際的に腺疫は多くの国で風土病である」
 
という記載がありました。
 
 
風土病とは、「特定地域に持続的に多く発生する病気。その土地特有の自然環境や生活習慣が関与する。」だそうです(三省堂 大辞林 第三版)。
 
 
 
 
腺疫は、連鎖球菌によって引き起こされる疾病です。
 
特徴的な症状は、顎下リンパ節の腫脹です。
 

(出典:腺疫(第3版)/日本畜産会)
 
 
他には、発熱、鼻汁、元気消失、リンパ節からの排膿がみられることも。
 
 
細菌感染によるものですが、抗生剤の全身投与には賛否両論があります。
 
リンパ節に膿瘍が形成された場合、その中心部にまで抗菌薬が到達しないとされているためです。
 
また、感染の進行による免疫刺激を妨げ、リンパ節肥大→破裂という病態経過を遅延させます。
 
これにより保菌馬となったり、重篤な症状を引き起こしやすくさせるとも言われています。
 
 
そのため治療としては、疼痛が強い場合には消炎剤を用いたり、温熱パックなどでリンパ節の排膿を促したりします。
 
ただし呼吸困難、高熱など重篤な症状が出た場合には抗生剤を使用することもあります。
 
 
アメリカやオーストラリアなどではワクチンが用いられていますが、日本では市販されていません。
 
また、100%感染を防ぐことはできないそう。
 
 
 
 
栗東では年に数回は診ており、また日高、関東の診療所でも治療を依頼されることはあります。
 
なので日本の、少なくともその3箇所では、それほど珍しくない疾病なのだと思います。
 
 
腺疫(第3版)(日本畜産会)によると、1992-2010年に腺疫の発生が確認されたのは北海道、福島、千葉、滋賀の4県。
 
 
ここ数年のデータが無く分からないのですが、これも風土病、と言っていいのでしょうか…?
 
単に馬の多い地域で見られているだけなのでしょうか。
 
 
 
 
 
 
 

 
遠巻きに鳩を狙うも、既に気付かれているメッシ。
 
 
 
N
 
 

副手根骨について

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腕節をX線検査をしていた時のこと、

「この骨(=副手根骨、矢印)はどうしてここにあるの?」という質問を受け、

この副手根骨という骨について調べてみました。

 

 

馬の腕節(手根関節)は、

人間で言えばちょうど手首の部分に当たる関節です。

 

腕節は、副手根骨・橈側手根骨・中間手根骨・尺側手根骨・第二手根骨

・第三手根骨・第四手根骨の計7つの小さな骨が手根間靭帯で繋がれながら、

橈骨及び中手骨と 主要な3つの関節(橈骨手根骨関節・手根骨間関節・手根中手関節)

を構成することで成り立っています。

 

手根骨は、関節軟骨と関節内の滑液と共に

前肢にかかる衝撃を吸収するのが主な働きですが、

 

この中において 副手根骨は掌側に位置し、

外側尺骨筋と尺側手根屈筋が付着していています。

 

 

 

これらの筋肉は主に上腕骨の外側上顆に始まり、

収縮することとで “手根関節を屈曲する” 作用が生まれます。

 

またそれぞれ別の神経支配を受けている(外側尺骨筋は橈骨神経・尺側手根屈筋は尺骨神経)ため、

2つの筋肉が同時に収縮しないことで 副手根骨骨折が発生する、

という病態もあるそうです。

 

 

(*参考画像:「馬の跛行ーその原因、症状及び治療ー」J.R.ルーニー著(日本語版) p.64より)

 

 

ちなみにパンダの副手根骨はよく発達しており、

これが “第7の指” とも言われるような 手首膨らみとなることで、

竹を掴んで食べるのに役に立っているとか。

 

 

副手根骨は英語でいうとaccessory carpal bone、

accessoryには “付属品/装飾品” の他に “共犯者” という意味があるそうですが、

機能を考えて見ると、単なる付属の骨ではなく きちんと役割を担っている骨なのだなと感じます。

 

 

 

関東の拠点が船橋に移動しました。

コツコツ頑張っていきたいと思います。

 

S

 

たいせつな鼻のお話

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今回、はじめてブログを書かしていただきます、

当プラクティスの新人獣医師 T です。

今週は馬関係者なら日々の管理で興味を抱くであろう、鼻の話をします。

 

 

Ⅰ. ) そもそもなんで鼻が大切なのか?

 

ウマは他の動物と異なり、口腔が胃のみにつながっている。

そのため、口呼吸ができない仕組みになっている。

なので何らかの原因で鼻腔が詰まると呼吸が苦しくなってしまう。

さらに悪いケースでは辛うじて呼吸ができる状態になってしまう。

 

 

Ⅱ. ) では、鼻腔が詰まる病気ってどんなものがあるのか?

 

『蓄膿症 Empyema』

 

副鼻腔炎や上部気道炎(鼻から咽頭まで)、歯牙疾患は放置すると、

副鼻腔の細菌感染またはこの部位へ感染の波及が起こることがある。

 

このような病気を蓄膿症といい、

軽度から重度まで、病状には大きく差がでる。

 

軽度な蓄膿症の多くは膿性鼻汁がみられるが、

悪化すると鼻汁も少ししか出なくなり、それらが副鼻腔に貯留する。

また、病状の悪化と相応して、徐々に呼吸がしにくくなる。

 

ウマは私たちのように鼻をすすって分泌物を口から吐き出すことをしないのかもしれない。

 

そのため、膿が徐々に貯まり内側から鼻の構造を圧迫した結果、

外観にも変化がみられることもある。

さらには、もう一方の鼻腔も狭くなり、さらに呼吸が苦しくなる。

 

このような状態のときに頭蓋骨をコンコンとノックすると、

物をいっぱいにいれた木箱に似た音が聞こえる。

 

 

 

このように蓄膿症の診断には

おもに飼い主の稟告、レントゲン検査、内視鏡検査が有用だ。

 

治療には抗生物質を用いるが、症状を改善できない場合がある。

 

その際に選ぶ手段として円鋸術というものがある。

 

これは、外側から鼻腔に向かって骨に丸い孔をあける外科手術である。

その孔を通して繰り返し鼻道を洗浄し、貯留している膿を抜く。

 

この治療には毎日やる根気強さが必要だ。

 

 

 

最後に、飼い主がやるべきことは、

結局のところ、言わずとも、

日常管理での状態チェックが最重要項目となります。

 

鼻はウマにとって代替不可能な呼吸の部位のひとつです。

 

上記のような病気の悪化で、

飼い主も馬も精神を削る思いで病気に向き合うことにもなりかねません。

 

顔面の腫れや鼻出血などの異常がみられたら自己判断でそのままにせず、

すぐにかかりつけの獣医さんにスマホから電話相談しましょう。

 

 

その行動が大切な愛馬との健康な生活へとつながるから。

 

 

T

馬のフケについて

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最近、急に暖かくなってきましたね。

私は馬の獣医になってから、初めての夏を迎えようとしています。

 

この季節、競馬場へ行くと

「ちょうどレースの時にフケでさ」

と、いうような声を厩務員さんから聞くことがあります。

 

「フケ」とは、牝馬の発情のことを言います。

 

牝馬の発情期は、春先から9月頃までの数ヶ月間。

まさにこれからの季節ですね。

 

周期は約21日とされ、

5〜7日程度の発情期、約14日の無発情期を繰り返します。

 

発情期の牝馬は、

多くの場合、他の馬に対して過剰に興奮するようになります。

気性が穏やかな馬でも、威嚇したり、暴れたりするようになることもあるそうです。

 

 

 

発情の兆候として、

尾を左右に揺らしたり、後肢の歩様がぎこちなくなったり、

馬を引く人に執拗に甘えるような仕草をするようです。

 

身体所見として、

陰部の腫脹や、膣からの分泌物がみられます。

 

さらに、排卵時には痛みを伴うこともあり、

一見、疝痛を起こした時のような症状がみられることもあります。

 

海外では、発情による興奮に対して、「30日間トライアル」として、プロジェステロン合成剤の経口投与を30日間続けるという方法があるそです。(参照:Mares Behaving Badly:Is it Estrus or Something Else?)

 

日本でも、ホルモン剤の注射は行われているようですが、競馬場内では一般的に投薬による治療は行われておりません。

 

 

耳を横に倒し威嚇したような馬がいた場合、

怒っているだけなのか?恐怖や痛みによるものなのか?

あるいは、発情による興奮なのか見極める対応する必要があります。

 

稀に、フケによる興奮でレースを走りきり勝利する馬もいるようですが、

「できたらレースとは被らないでほしいな」と、

厩務員さんは言っておりました。

周期を計算し対策を考えたり、周りの環境に気を使いながら

夏が終わる間までは付き合っていくしかないのかもしれません。

 

この時期ならではのお悩みもありますが、

 

 

 

初夏ならではの美味もあります。

先日、厩務員さんからいただきましたこちら

九十九里で採られた「白子玉ねぎ」です!

肉厚で甘みもたっぷり、バターをのせて温めただけでとても美味しくいただけました。

 

Y