寄生虫

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馬にも寄生虫がつくことがあります。
 
消化管内寄生虫で、競走馬で特に重要とされるのが、円虫、回虫、条虫の3種です。
 
 



(上から円虫、回虫、条虫。出典:馬の寄生虫病-中央畜産会)
 
 
これらはおもに小腸・大腸、円虫は肝臓や前腸間膜動脈、回虫は肝臓や肺などにも寄生します。
 
大量寄生すると、疝痛、下痢、錯綜、食欲不振、皮膚の菲薄化、元気消失などの症状を引き起こします。
 
特に仔馬では、腸閉塞や腸重積などを引き起こし、開腹手術を要することもあるため、駆虫が重要になってきます。
 
 
 
駆虫薬は基本的に経口投与。
 
ならば定期的な投与をしていれば安心!かと思えば、そういうわけでもなかったりするのです。
 
 
最近は駆虫の重要性が広まっており、駆虫を馬に投与することは珍しくなくなってきています。
 
下痢をしているからちょっと駆虫薬あげておこう、という声も聞かれます。
 
 
 
しかし近年、薬剤耐性をもつ寄生虫が増加しているのです。
 
 
 
なぜ薬剤耐性がつくかというと、
 
寄生虫の中には、もともとある駆虫薬に対し耐性を持つものがわずかに存在します。
 
例えばある牧場で、飼育している馬に駆虫薬Aを定期的に投与するとします。
 
その牧場の馬では、駆虫薬Aに対し耐性をもつ寄生虫のみ生き残り、他の寄生虫は死んでしまいます。
 
「駆虫薬Aのみを、頻繁に投与する」ことを繰り返すと、その牧場の馬の体内では、駆虫薬Aに対し耐性をもつ寄生虫が生き残り続けることになり、
 
その寄生虫同士が交配し、遺伝子が次の世代に引き継がれ、産卵した虫卵が体外に排泄され、また他の馬に感染する…ということが繰り返されます。
 
結果として、「牧場で駆虫薬をちゃんと投与しているのに駆虫されず、新たな感染を引き起こし続けている」ということになってしまいます。
 
 
 
そんな事態を防ぐためには、
 
・駆虫前・駆虫後に虫卵検査を行い、確実な駆虫がなされているかを確認する
 
・駆虫薬を毎回同じものにするのではなく、種類を変えて投与する
 
などの対策が必要とされています。
 
 
また、駆虫前に検査を行い、病原性が高いとされる虫卵数を超えた馬にのみ駆虫薬を投与すること(=選択的駆虫)も提唱されています。
 
寄生虫が感染していたとしても、それが少量であれば、馬に疝痛などの症状を呈する可能性は低いためです。
 
 
 
ただし、やはり現実問題として、検査にも駆虫にも、お金がかかってしまいます。
 
すべての牧場で、理想的な駆虫計画を立てて実行できるか?というと、なかなか難しいところです…。
 
 
 
とある牧場で依頼を受けたため、虫卵検査を行いました。
 
虫卵検査にもいろんな方法がありますが、今回行ったのは、蔗糖浮遊遠心法です。
 
 

 
 
これは簡単に言うと、高濃度の蔗糖液を使うことで、糞便から虫卵を遊離させる方法です。
 
陽性なら、こんなものがみられます。
 

 
左から、円虫卵、回虫卵、条虫卵。
 
検査結果は陰性。とりあえず今回は、駆虫の必要は無いようです。
 
 
 
 
 
大学に入学したころ。新歓で、ほろよいの寄生虫病学の教授に
 
「君は寄生虫は悪いと思うかい?!人間だって、地球に寄生しているようなもんだよ」
 
と言われたのを覚えています。
 
とんでもないところに来てしまった、と思いましたが、数年後まさか自分がその研究室に所属することになるとは…
 
 
 
 
 
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